これまで20年に渡って開発が進められてきたアルツハイマー病のお薬は、2023年9月にレケンビ®、2024年11月にケサンラ®が販売されました。
この2つのお薬は、抗アミロイドβ抗体薬といわれ、これまでの認知症の薬とは作用が大きく異なり、アルツハイマー病の発症の中心的な役割を担うアミロイドβ(Aβ)を取り除く作用により、脳内のAβを減らし、アルツハイマー病の進行を遅くすることが期待される、疾患修飾薬(DMT)といわれるものです。
一方で、Aβを除去する薬には、脳のむくみや出血といったアミロイド関連画像異常(ARIA)という副作用があらわれることがあります。ARIAは、脳からAβが除去されるときに、一時的に血液の成分が血管の外に漏れ出すことで起こるのではないかと考えられています。ARIAは、APOEという誰もが持っている遺伝子の型によって、発症のしやすさなどに違いがあるとされています。DMTを安全に使うためにAPOE遺伝子の型は重要な情報です。
また、DMTが、アルツハイマー病の長い経過において、どんな長期的効果があるのか、認知機能だけではなく生活面の効果はどうか、などまだ不明な点も多く、実際の現場での長期的な評価が求められています。
この研究は、DMTを投与する方を対象に、投与前と投与後に診療で得られたデータと、この研究で採取させていただいた血液検体を用いてAPOE遺伝子の型とアルツハイマー病の血液バイオマーカー(*)を検査し、さらに介護情報など生活面での評価を加えて総合的な評価をすることで、新しい治療法には、どの程度の副作用がおきるのか、副作用の発症に影響する要因は何か、安全かつ有効なアルツハイマー病治療を可能とするには、どのような体制整備が必要か、疾患修飾薬が実際の診療でどのような長期的効果があるか、副作用や効果についてどのような要因を用いれば予測できるのか、といった点について研究します。
できるかぎり多くのDMT治療をうける方に研究に参加していただくことで、有効かつ安全にDMTを用いるための、よりよい医療体制の構築につながることが期待できます。
*血液バイオマーカー⋯正常なからだや病気の状態、病気を治療したときなどの反応などを客観的に測ることができる指標

国立研究開発法人
国立精神・神経医療研究センタ-
神経研究所 所長 岩坪 威

